【破廉恥な肢体】松永清美(30歳・秘書)の場合

理性の防壁を打ち崩した、めくるめく倒錯愛に溺れた二人。

たまたま目にした彼女の肉体の深い反応から、私は秘められたMの気を見抜いた。

私が清美の肉体を貪るまでは、SMという背徳を妄想することはあっても、現実に実行したことは皆無だった。

しかし、彼女の肉が発する声と反応から、清美こそが私以上にSMを飢えた肉体で求めていることを悟った。

以来、私たちは二人で倒錯の深淵へと沈んでいった。

私は神奈川県で祖父の経営する貿易会社に勤める三十四歳の男性だ。

大学卒業後、都内の商社に四年勤務した後、今の職に就いたが、同族会社という気楽さで営業部長というポストを与えられた。
同い年の妻は大学の同級生で二十四歳のときに結婚し、小学校二年生の男の子が一人いる。

言うなれば、何不自由ない生活を謳歌する三代目という気楽な立場だ。

妻との夜の生活は極々普通で、私の心に特別な刺激を与えることはなかった。

このような平穏な生活を送る私が、裏側で倒錯したSMの世界に深くのめり込んでいるというのは、他人から見れば異常と映るだろう。
しかし、一人の女性との情事をきっかけに、私は肉体と精神の異常ともいえる世界に引きずり込まれてしまったのだ。

その女性というのは、他でもない、私の秘書である。

名前を松永清美と言う。

学生時代に二年ものアメリカ留学をしていたという優秀なキャリアウーマンだ。

外見は細身で知的だが、その楚々とした外見とは裏腹に、驚くほど豊満で、私の凌辱を待つかのような破廉恥な肢体をしていた。

清美は私が人社する以前からこの会社にいて、祖父がその才能を高く評価していた。

そんな縁もあり、彼女は私にとっても仕事の上で欠かせないパートナーとなった。

小さな同族会社ということで仕事と私生活をはっきりと区別することが難しく、夜遅くまで彼女と二人で残業ということもしばしばだ。

結果として、貞淑な妻と共にいる時間よりも、清美と密室で過ごす時間の方が遥かに長いというのが、私の倒錯した日常となった。

特に入社したての頃は仕事を早く覚えなければと、ほとんど毎日のように残業していましたので、当然、清美との仲も親密になって行った。

当初は深い関係というわけではなく、妻も清美のことをよく知っていたので、仕事以外の関係はたまに飲みに行くという程度のものでした。

そんな曖昧な関係が五年ほど続いたが、三年ほど前のある日、どちらから誘うというわけでもなく、私と清美は肉体関係を持った。

一度、背徳の蜜を味わってしまうと、理性の制動は外れた。

私たちは、当然の如く、誰にも言えぬ秘密の情事を貪るようになった。

清美の特異な性癖に気付いたのは、深い関係になってからしばらくしてのことだった。

私たち二人の情事は平均して週に二回程度、郊外のラブホテルで行うが、その密室で、清美が発する声は、普段の彼女からは一切想像できぬ、獣のような激しい乱れ声だった。

会社で見せる、楚々とした彼女の姿を知っている私にとっては、それは底知れぬ淫靡な側面であった。

もちろん、清美のような才色兼備の女性が自分の下で肉体を乱す姿を見るのは男にとってこれほど愉しいことはない。

清美が私を驚かせたのは、その声ばかりではなかった。

私が性交の最中、彼女の手首を力任せに抑え込み、荒々しく凌辱する体位をとると、清美は陶酔したように、更に声を裏返らせて高く張り上げるのだ。

清美の魂は、私の暴力的な支配を求めている。

この肉体には紛れもないMの気がある、と私は確信した。

思春期の少年のように、男性なら誰でも一度はSMプレイを夢想することがあるだろう。

私も若い頃はあれこれと想像を巡らせたものだ。

しかし、それは倒錯的な夢想でしかなく、専門雑誌を愛読することもなかった。

しかし、私の下で激しく乱れる清美の姿を見て、私の心の底に沈殿していた倒錯的なSM癖が、清美の淫靡な姿を見て、歓喜とともにじわじわと芽を出してきた。

「次に、この破廉恥な肢体をベッドに横たえる時は、全身を縛り上げてやろう。彼女の瞳は屈辱で濡れても、肉体は絶対に私の支配を拒絶しない」と、私は内なる愉悦をもって決意したのだ。

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