その後、私の横に坐った浩子に、メモ紙を使って彼女の恥辱の台詞を復唱させた。
待つこと二十分。
その間にも、ネチネチと肌を這い回る衆人の視線、更にはおばさん達の鋭利な蔑みが、彼女の肌に毒のように染み込む。浩子の耳は、周囲のひそやかな嘲笑を敏感に拾い上げ、項垂れた首筋には、脂汗が滲み出していた。
空間全体が、粘つくような辱めの空気で満たされている。
(見られている。私のこの丸出しの恥部を。皆が汚いものを見るような目で、私を蔑んでいる……! ああ、この屈辱が、股間の奥を、じっとりと熱くする……)
なかなかの責めであったが、彼女にとっては救いのような受付の声で自分の名を呼ばれ、逃れるように診察室へと入った。
中に入っても、まだ待っているのだろうか?
診察室に閉じ込められた彼女の声が、なかなかヘッドフォンに届かない。
暫くすると、「そこのベンチに坐って、名前を呼ばれるまで待っていて下さい」と、突き放すようなオバサン看護婦の声がした。私はまだかまだかと焦燥に駆られ、額に青筋が立つのを感じた。
ただザワザワする音、知らない人の名を呼ぶ声が二~三続いた後、彼女の名前を呼ぶオバサンの声、そして「ハイッ」と小さく囁く浩子の声が聞こえた。
私の分身は徐々に昂り、私は耳の奥の鼓膜に全神経を集中させた。
「バタンッ」とドアの閉まる音、「一体どこが……悪いのですか?」と戸惑いを隠さぬ若い医師の声。
「あの……こ、肛門の入口が、な、何かムズムズと疼く感じがして……お通じをするのが、辛くて……二日くらい……便が出ていないんです……」
と、先にメモで覚えさせた恥辱の台詞を、羞恥に声が上ずりながら、とぎれとぎれに彼女は話した。
「そこの入口側の荷物カゴにバッグを入れて、こちらの診察ベッドへどうぞ」と、事務的に冷たいオバサン看護婦の声がした。
「グシャッ」
荷物を置いた音だろう、こういう湿った感じの音が左耳から聞こえた。
左側のバッグに仕掛けたマイクからは、診察室内部の音よりも、看護婦たちのざわめきが良く聞こえる。
左耳からシャーッというカーテンの閉まる音がした。
「私が入るまでの間に、スカートを捲り上げて穿いてきた下着のすべてを、そこの籠に入れて丸裸になって待っていて下さい」と、有無を言わさぬ医師の命令が聞こえた。
(スカートを捲る音。肉の弾力と、皮のベルトが擦れる音。ああ、すべてを脱ぎ捨て、あの神聖な診察台の上で、彼女は今、世にも淫らな雌の姿を晒しているのだ……)
「では、うつ伏せになって下さい」
「は、はい……」
「それでは、診ますよ。肛門の力を充分に抜いて下さい」
(後で浩子の告白により知るのだが、腰の辺りにはもう一枚仕切りのカーテンが引かれており、医師の顔は見えなかったという。その匿名性が、彼女により淫靡で、凄絶な呻きを、小さいながらも洩らす自由を与えたのだろう。)
「ウ、ウーン」
死に絶える程の羞恥に身を焦がしているのだろう、浩子の声は細かく震えていた。
「痒みがあるのは、肛門の入口側ですか? それとも肉の奥ですか?」
「い………入口の……方です」
獲物を観察するような、モノ好きなおばさん看護婦のヒソヒソ声が、雑音の向こうから鮮明に届いた。
「あのコねぇ、パンティはおろか、何も身に着けてないみたいよォ。カゴの中に下着の類が何もないみたいだし、手にも持っていないわ」
「それに、あのハダカ同然の格好だもの。ブラなんか着けられるわけないわよね」
「すると、あの服の下は何も着けてないってことになるわね。イヤラシイわねェ」
と、おばさん達のコバカにした話し声が、私だけの楽しみとして聞こえていた。
その間、浩子はただ、「ア、アー」「ウーン」と、切なげに呻いていた。かなりの自制心が見える遠慮がちの声であったが、その湿った、愛液にまみれた呻きは、最高の興奮を私に与えた。
そして、羞恥と快楽の奔流の中で、浩子は呻くように懇願した。
「あ、あの……先生……浣腸を……していただきたいのですが……」
「そうですか……分かりました」
この声のニュアンスといい、看護婦のやりとりで分かったことだが、どうやら、浣腸という屈辱を目当てに来る変態女が、少なからず存在するらしい。
コメントを残す