[1337]隷獣秘書 最終章 惨鬼のいけにえ 里美加奈

五代産業の秘書室は、父の遺影が睨むように壁に掛けられた、息苦しい檻だった。

ゆり――里美加奈は、そこに座る自分の姿を、鏡のように映すガラス窓越しに眺めていた。

長い組め髪が、肩を覆う黒いヴェールのように揺れ、彼女の視界を時折遮る。

(この髪が、私の弱みになるなんて……)

乗っ取り屋の手先、甲斐太郎の影が、部屋に忍び寄る気配を、彼女は肌で感じ取っていた。

父の死後、会社を継いだはずのゆりは、借金の闇に絡め取られ、身体を差し出すしかなかった。

太郎の指が、彼女の首筋を滑る感触は、冷たい鎖のように、息を詰まらせる。

(ご主人様……須藤様なら、こんな屈辱を、もっと美しく昇華させてくださるのに……)

太郎の責めは、浣腸の儀式こそないものの、多様な痛みを、彼女の肉体に刻み込む。

熱蝋の滴が、肌を灼く音が、部屋に響く。

ゆりの長い髪が、顔を覆い、苦痛の表情を隠すのが、かえって太郎の苛立ちを煽る。

(見えない……私の涙が、隠されてしまう……)

バイブの振動が、彼女の芯を震わせ、鞭の軌跡が、赤い線を引く。

ゆりは、歯を食いしばり、耐える。

(須藤様の調教のように、非情で、でも愛の形跡を残すものなら……)

クライマックスと銘打たれたはずの最終章は、盛り上がりに欠け、ただ淡々と終わる。

ゆりの心は、混乱の渦に飲み込まれる。

(筋書きがわからない……この痛みは、何のためのもの?)

黒田監督の難解な世界観が、彼女の運命を曖昧に塗りつぶす。

ゆりの美貌は、組め髪の影に隠れ、被虐の炎が十分に燃え上がらない。

(もっと、顔を晒して、屈辱を味わいたかった……)

須藤の記憶が、ゆりの脳裏をよぎる。

あの冷たい視線、歪んだ愛情。

(もし、須藤様なら、この髪を縄のように使って、私を縛り上げてくださるのに……)

ゆりは、太郎の影に倒れながら、静かに諦観する。

(これが、私のいけにえの運命……閉塞した闇の中で、永遠に……)

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