廃墟のようなスタジオの空気は、埃と汗の匂いが混じり、息苦しい膜のように彼女の肌を覆っていた。
真木いづみは、床に横たわり、足を広げられた姿勢で、微かな震えを抑えきれなかった。
針の先端が、冷たい光を放ち、彼女の最も秘められた場所に近づく感触が、脊髄を凍らせる。
(須藤様……この痛みは、貴方の調教の延長線上。貴方の視線なら、この針を、愛の糸として結んでくださるのに……)
バクシーン山下監督の声が、低く響く。
「これで、君の探求は完結する。自分探しのためだろ?」
いづみの指先が、床のシーツに食い込み、爪が白くなる。
ハードコアの渦中、鞭の軌跡が背中を赤く染め、エログロの液体が肌を滑る中、彼女は耐えてきた。
吐息が熱く、喉の奥で詰まる。
だが、針がヒダヒダに触れた瞬間、鋭い痛みが、脳髄を貫く。
縫い合わせられる行為が、肉体の限界を嘲笑う。
(耐えられない……須藤様の鞭なら、痛みの果てに恍惚があるのに。この針は、ただの残酷……)
いづみの視界が、涙で滲む。
叫びが、喉から迸る。
「やめて! マジでギレる!」
撮影が、中断する。
スタッフのざわめきが、遠く聞こえる。
いづみの身体は、震えを残し、床に崩れ落ちた。
針の冷たさが、残像のように肌に残る。
(須藤様、この惨めさが、私の真実。貴方の調教で、こんなキレる自分を、永遠に封じてくださるなら……)
スタジオの闇が、彼女を吞み込む。
SMの職業が、厳しい棘のように、心を刺す。
(自分探しは、須藤様の闇の中でこそ、完結するのに……)
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