快美の炎は恵美の体奥にくすぶり残り、そのため恵美の足どりはいかにも心もとないものであった。
腰を締めつけるようにして近くの公園まで無理矢理連れていくと、恵美は全身に無数の視線を感じるためか、責め苛む羞恥の情炎のために身を焦がし、肩で荒く息をついて、立っているのもやっとといった有様であった。
「ほら、ご近所の奥さんが、浮気妻の淫らな姿を窓から覗き見ているぞ」
耳元でそう呟くと、恵美は耐えきれぬ、といった様子で身を小さくして、その場にうずくまってしまうのであった。
辺りには無邪気に砂遊びやシーソーをする園児の姿しか見当たらず、たまたま大人の姿はなかったのだが、高層の無数の団地の窓が嗜虐のまなざしとなって、恵美の全身を射抜いているのだろう。
(ああ、誰か見ている。私はいま、この男の奴隷として晒されている……この屈辱が、堪らなく、熱い……!)
私とて、ご近所の顔見知りの人に姿を認められてはまずいと思い、羞恥に消え入りたげな恵美をひき立てると、近くの団地の屋上に続く階段へと連れ込みました。
「どうしたんだ。私たちの関係を認めさせ、晴れてSM夫婦になるというのが恵美のたっての望みではなかったのか。今日がいい機会なのに。どうだ、大きな声で淫らで破廉恥な奴隷ですと大声で叫んでみれば。そうすれば一遍に恵美の望みは叶えられるんだぞ」
「だ、だって……」
顔を胸の中に埋めるようにして、必死に羞恥に耐えるのが精一杯という風情の恵美は、涙声で、切れ切れの言葉を繰り返すばかりであった。
屋上に続く重い鉄製のドアを押し開け、消え入りたげな恵美を連れ込んだ。
給水タンクと無数のアンテナが立ち並ぶ、殺風景なコンクリートで区切られた空間がそこに広がる。
見晴らしのいいそこに立つと、私の視野に飛び込んでくるのは、巨大な墓石のような、群立するコンクリートの建物の姿であった。
私は、荒涼とした風景をしばし楽しむと、とてもそんな心の余裕のない恵美のコートを乱暴に剥ぎ取り、皮の下着だけにしてやった。
「ほら、団地のみなさんに、恵美の淫らな姿を見てもらいなさい」
「い、いやです」
身を縮めてうずくまろうとする恵美の髪をぐいと引き上げ、黒革のブラから苦しげに突き出した乳首を指に挟みつけ、ひねり上げた。
「い、いたい!」
恵美の絶叫に耳を貸さず、乳首をなおも責め立てながら、苦しげに喘ぐ濡れた唇に私の口唇を重ね、舌を深く刺し入れていく。
すると本能のように、恵美は私の舌に自らの舌を絡みつかせ、貪るように唾液を吸いたて、むしゃぶりついてくるのであった。
淫蕩に蕩けてくるような甘美な感覚に、私の体奥にも痺れるような感覚が電撃のように走った。
乳首を弄んだ手を離し、深く恵美の腰を締めつけるベルトをゆるめ、膝の辺りにまでズリ下げた。
剥き出しになった秘肉の間に指を沈めていくと、滾るほどに煮えたぎる花蜜の濁流が氾濫を起こしたかのような湿潤で、たちまち私の指の根元はおろか掌全体を濡らしていくのであった。
その途端、私の内部に潜む欲情が堰を切ったように湧出し、抑えきれぬ性衝動の萌芽がブリーフを痛い程に突き上げてくるのであった。
むしゃぶりついてくる恵美の貧欲な唇を引き剥がすと、私はスラックスとブリーフを膝までズリ下げ、恵美の唾液を滴らせた唇をそこに導き入れた。
舌を伸ばして、赤黒く怒張した先端を貪るように舐め上げると、ゆっくりと喉奥まで含み込み、舌を纏わりつかせてくる。
私との短くない秘め事の経験ですっかり舌戯を身につけた恵美は、肉茎を口腔全体を使って愛おしみながら、空いた手で、睾丸と肛門を責めたててくる。
繊細な指先は、その縫い目辺りをなぞり、全体を押し上げ、揉み立て、もう一方の手は肛門に指を忍び込ませ、その指先を忙しなく抽送し、私を一気に快楽の頂へ追い上げてくるのであった。
下腹に派生した快美の塊は、大きく脹れ上がり、爆発せんばかりに膨張していく。
すっかり恵美に主導権を握られた格好の私は、快楽の甘い誘惑をふり切るように、恵美の口腔から怒張を引き抜いた。
玩具を取り上げられた幼児のように、恵美は「くう、くう」と咽び泣きを上げて、引き続きの奉仕を懇願したが、私はそれを拒否すると、恵美に犬さながらに四ツ這いになるよう要求した。
(もっと私を辱めて。この人だけの、汚い牝にして……! この屋上から、誰か私を見ていて!)
腰をくねらせ、挑発的なエロチックな腰を売りながら、私の要求する姿勢をとる恵美の背後に私は廻って、指先で湿潤の辺りをなぞり上げ、同時に親指で淫らな収縮を貪るセピア色の皺を揉み立てた。
恵美はもう辺りをはばかることなく快楽の叫びを上げ、早く気かせて欲しいと全身で訴えてくる。
指先でなおも意地悪く嬲りながら、
「さあ、恵美、みんなに聞こえるように、どうして欲しいか言ってごらん」
「ああ、し、して下さい」
「何をして欲しいのか分らないよ。もっとはっきり言ってみなさい」
「ああ、恵美の、お、オマンコに、ご主人様のチンポを入れて、気からして下さい。恵美は気が変になりそうです……」
度重なる快感責めで生気のなくなった恵美に、固く充血した男根を晒すと、狂ったように貧った。
自らの言葉で一層被虐感を高めている恵美は、いよいよ息を荒げ、まるで失禁でもしてしまったかのように、溢れ出した愛液を内腿に滂沱と滴らせ、裸のコンクリートに黒々とシミをつけていくのであった。
「いいか、身体からすべての抵抗を捨てろ」
私の言葉が聞こえているかどうか分らぬ程の恵美の混乱ぶりであったが、私は湧き上がる嗜虐の情感に促されるまま、昂ぶりきった股間の分身の先端を、充分に揉みほぐした恵美の肛門の入口に押し当てると、徐々に腰を入れて、押し沈めていった。
「ううッ、ぐうッ」
痛苦のためか、快感のためか、くぐもった呻き声を上げる恵美。だが、その痛苦こそがこの女の渇望なのだと、私は己の嗜虐心に鞭打った。一気に、根元まで押し入れた。
まだアナルセックスの経験はさほど積んでいない恵美は、多少の痛みが伴う。それでも徐々にアナル愛の悦びに目覚めつつある恵美は、屋外の倒錯した行為に被虐感を一際募らせているかのように、挿入された私のものをもの凄い力で噛み切らんばかりに締めつけてくる。
徐々に全身にリズムを与えながら、抽送運動を繰り返していくと、それに合わせ、恵美は快感を貪るように前後に尻をゆすり立ててくるのである。
私のものを凄い力で喰い千切らんばかりに締めつけてくる腸腔で、私は一気に登りつめていた。
私が項を極めると同時に恵美も登りつめたらしく、一際かん高い呻きを上げると、尻から、太腿の筋肉をプルプルと痙攣させて、快楽を貪り尽くしているのであった。
私が腸腔内にすっかり精を滾らせてしまっても、恵美のその締めつけは少しも緩まない。
満身の力を込めて抜き取る。強烈な責めのためであろう、恵美の肉の襞から、私の精とともに、鮮血が生々しく滴り落ちた。
激しい愛欲の儀式を終え、我に帰ってみると、宙天高かった陽光は、すっかり群立する建物の陰に身をひそめ、肌寒い冷気が私たち二人を取りまいていた。
私は恵美にコートを羽織らせると、全身の筋肉が弛緩してしまったかのように、グッタリとした恵美の身体を抱えて、部屋に戻った。
部屋に戻るなり恵美にブランディを飲ませてからバスに湯を張り、その中に恵美の裸身を沈め、暖めてやった。
湯に身を浸しているうちに、ようやく気を取り戻した恵美に、どうだったと尋ねると、潤んだ瞳を恥ずかしそうに向けて肩を竦めてみせた恵美は、
「こんな屈辱的なのに、こんなに感じたのは初めてです。お願い、恵美は淫らな牝だからって、見捨てないで下さいね」
とても人妻とは思えぬ台詞を吐いて、私を悦ばせてくれる恵美であった。
最早、私たちが法の下で夫婦になることよりも、もっと深く、強い、背徳の絆で結び合うことができたのだ。それは、肉体と精神の奥底までも、お互いの闇を分かち合ったからに他ならない。
私も、こうした背徳的な緊張した状態で楽しむ方が、夫婦関係という弛緩した状態より幾倍か刺激的であると確信している。恵美もまた同じ気持ちであろう。
また何かの機会がありましたら、私と恵美との倒錯の秘め事の模様を報告してみたいと思う。
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