あの夜、須藤さんに処女という名の薄い膜を破られて以来、私の毎日は変わってしまった。
仕事中も、食事中も、頭の中は須藤さんのことで占められ、早くあの肌に触れたい、あの声を聞きたいという渇望が、身体の奥で疼き続けた。
「会いたくて、会いたくて、仕方が無い、、、」
そのどうしようもない渇望を、日々の雑務で必死に押さえつける。
だから、休日の前日だけは、もう我慢ができなかった、私は仕事を無理やり終わらせ、逃げるように家路を急いだ。
(今日、会える……!)
急いで、団地の自室へ駆け込むと、シャワーも浴びず、いつもとは違い、念入りに化粧を施す。
慣れない手つきでファンデーションを塗り、アイラインを引く。
大人の仲間入りをしたのだから、もう子供っぽい格好はできない。
クローゼットの奥から、先日買ったばかりの、身体の線が浮き出るタイトなミニスカートに着替える。
少しでも大人びて見えたくて、胸元が大胆に開いたブラウスを選んだ。
須藤さんに「女」として見てもらいたい。
その一心だった。
私なりに、精一杯の努力だった。
今日で、彼の家へ行くのは二度目になる。
マンションの玄関に着き、インターホンを鳴らす指が、期待で震えた。
心臓の音が、耳元で激しく鳴り響いている。
『優子か?よく来たね、今、開けるよ』
オートロックの解除音と共に、私は現実から切り離された。
エレベーターが9階へと上昇する、わずか数十秒。
あの短い上昇時間ですら、緊張で息が詰まりそうだった。
その無機質な空間で、私の心臓だけが激しく鼓動していた。
いつものように、穏やかな笑みを浮かべた須藤さんが、私を招き入れた。
(会えた……!)
その顔を見た途端、募りに募った想いが溢れそうで、どうしてもまっすぐに見ることができない。
喜びと緊張が入り混じり、私はただ俯くだけだった。
ダイニングへ通されると、テーブルの上には、もう二人分の夕食が綺麗に並べられていた。
(……私が、何も食べずに急いで来ることを、知っててくれたんだ)
(やっぱり、この人だ。私が愛してる人は、こんなにも素敵な人なんだ……)
「夕飯、まだだろう。お腹が空いてるんじゃないか?私もペコペコでね」
「うんっ!」
咄嗟に、いつもの子供っぽい返事が出てしまった。
その瞬間、須藤さんの目つきが、ほんの一瞬、氷のように冷たくなった気がした。
(あ……違う……!)
「あっ……はい……!私も……お腹、ペコペコです……」
慌てて言い直す。
(……今、少し、怖かった……)
身体を許してから、何となく感じていた。
彼が時折見せる、私を試すような、サディスティックな一面。
でも、それが嫌だなんて少しも思わなかった。
それは、礼儀を重んじる、大人の男性の厳しさなのだと、私は解釈していた。
夕食の時間は、あのファミレスでの団欒と変わらず、ただ幸せな時間だけが過ぎていく。
お酒に弱い私が勧められるままに飲んだコップ一杯のビールが、私の緊張をさらに解きほぐしていった。
食後、ソファで談笑しながら、私はすっかりほろ酔いになっていた。
(……あたまが、ふわふわする……)
理性が、ゆっくりと溶けていく。
いやらしい気持ちとは違う。
(……触れたい。抱きしめられながら、肌を感じたい……)
その純粋な欲求が、身体の奥から湧き上がってきた。
私の、熱っぽい顔色や、いつもより甘えた声のトーンで、全てを察してくれたのだろう。
須藤さんは、何も言わずに私の肩を抱き寄せ、静かにキスをしてきた。
酔いと欲情で、身体から力が抜けていく。
私は、すべてを彼に預けた。
無言のまま手を引かれ、ベッドルームへと導かれる。
「……もう、分かっているね。この前と同じように、しなさい」
(……同じように……)
ベッドの脇に立ち尽くした私は、教わった通りに、スカートのファスナーに手をかけ、スカートを脱ぎ、ブラウスのボタンを外していく。
彼に見られているという事実だけで、指先が震えた。
下着姿になった私に、彼が問いかける。
「ブラジャーは、外さなくていいのかい?……乳首が、感じると言っていたね」
(……覚えてて、くれたんだ)
あの、自分でも持て余していた、歪んだ性癖。
それを彼が受け入れ、そして、求めてくれている。
その事実が、私をたまらなく興奮させた。
(責められたい……でも、本当に責められたら、私、どうなっちゃうんだろう……)
期待と恐怖が、私を縫い止める。
言われるがままに、背中のホックに手をかける。
カチリ、と小さな音がして、私を支えていた最後の布が滑り落ちた。
ベッドに横たわり、羞恥心から、思わず胸元を両手で覆う。
「……まだ、恥ずかしいんだね」
彼の声が、すぐそばで聞こえる。
「……でも、私に、ちゃんと見せてごらん」
その優しい命令に、私はそっと両手をほどいた。
二つの小さな乳房と、硬く尖った乳首が、彼の視線に晒される。
酔いのせいか、期待のせいか、全身のアドレナリンが暴走していくのがわかった。
「……とても、きれいだ。かわいい乳首だね」
その言葉だけで、嬉しさと恥ずかしさが入り混じり、下腹部の奥が熱く、疼き始める。
彼の指が、触れるか触れないかの、もどかしい愛撫で、私の首筋から乳房へと、焦らすように這ってくる。
それだけで、息が詰まり、声が出そうになる。
やがて、その指が左の乳首に辿り着き、親指と人差し指で、少し強めに”きゅっ”と摘み上げられた。
「ん、んん……っ!」
我慢していた声が、漏れてしまう。
(恥ずかしい……!恥ずかしい、のに……すごく、気持ちイイ……!)
「そうか。やはり、優子は乳首なんだね」
彼は、全てを知っているかのように呟いた。
「……特に、右の乳首が感じやすいと、言っていたね」
そういうと、今度は左手で、右の乳首を、さっきよりも強く、捻るように摘み上げられた。
「あっ……!だめ、それ……っ!」
その声を合図にしたかのように、両方の乳首が捕らえられ、さらに力強く、回転するように捻り上げられていく。
「も……っ、むり……!」
「無理、かい?……”無理”というのは、”気持ちがいい”ということだね」
「う……あっ、は、はい……!」
もう、我慢の限界だった。
本音を言えば、もう、イってしまいそうだった。
「そうか。……じゃあ、そろそろ、ここを確認しないといけないね」
彼の冷たい手が、私のパンティーへと伸ばされる。
(あ……!)
すっかり熱くなり、身体が本能的に反応し、濡れているのは自分でも分かっていた。
「すごく熱くなっているね。体温が、布越しに伝わってくるよ」
「……うん、すこし、湿っているな」
その、いやらしい言葉の一つ一つが、私をさらに昂らせ、下半身を疼かせる。
彼の手がパンティーのゴムを掴み、ゆっくりと引き下げられていった。
膝のあたりまで下げられた、その時。
「はっ!」と、我に返った。
(……うそ、どうしよう……!)
須藤さんに会える嬉しさで、お化粧と洋服にばかり気を取られて、下着のことまで、気が回らなかった。
仕事で一日中穿きこんだ、汗と……たぶん、微かなオリモノで汚れたパンティー。
それに追い打ちをかけるように、さっきの愛撫で溢れた、大量の愛液が、きっと、無残に染み込んでいるはず……。
「ご、ごめんなさい……!待って……!」
そう言って片手でパンティーを掴もうとしたが、時すでに遅く、それは”するする”と、無情にも足元まで引きずり降ろされてしまった。
須藤さんは、そのパンティーを手に取ると、ゆっくりと自らの鼻に近づけ、その匂いを深く吸い込んだ。
「……うん。これが、優子の匂いなんだね」
「いやあっ!」
(恥ずかしい……!恥ずかしい!でも、どうして……頭が、ボーッとしてくる……)
彼はさらに、”ヌメヌメ”と湿った一番汚れた部分を親指でなぞり、満足げに笑いながら言った。
「……まだまだ、処女の気持ちが抜け切れていないようだね」
「でも、その初心さは、決して忘れてはいけないよ」
(ああ……恥ずかしい……恥ずかしすぎる……!なのに、この胸騒ぎは、なに……?)
全てを晒け出し、全てを悟られている。
この感覚は、人生で味わったことのない、歪んだ充実感に満ちていた。
「さあ、じゃあ、練習も兼ねて、私の方も楽しませてくれないかな」
私と入れ替わるように、須藤さんがベッドに仰向けになる。
ぎこちない手つきで彼のベルトを緩め、ズボンを下ろしていく。
教わった通り、舌を使い、下着の上から彼の分身を舌で湿らせていく。
溢れる唾液が、布地をじっとりと濡らしていく。
完全に大きくなる前に、歯でウエストのゴムを噛み、ずり下げていく。
露になったそれを、口にいっぱい含んだ唾液が漏れないよう、慎重に舐め上げていく。
(……がんばらなきゃ……)
必死に、教わった通りに舐め上げていくと、まだ少し柔らかいそれが、徐々に熱を持ち、脈打ち、私の口には収まりきらないほどの硬い楔へと変貌していく。
その時だった。
「……優子、歯が当たっているぞ」
彼が、静かに言った。
「あっ……!痛かった、ですか……?ごっ、ごめんなさい……!嫌いに、ならないで……」
(怒られた……!難しい……次は、もっと、喜んでもらえるように……!)
「嫌いになる?ははは、最初はみんな、そんなもんだ。気にするな」
彼は笑ってくれた。
「その代わり、家に帰ったら、必ず毎日練習しなさい。……いいね?」
「……はい」
「バナナでも、胡瓜でも、身近にあるもので練習できるから」
(……練習……)
それは、恋人同士の会話ではなかった。
なのに、彼が起き上がり、私を強く抱きしめてくれた瞬間、私の心は歓喜に震えた。
(だい……だい、だいすき……!)
耳元で囁いたつもりだったけど、きっと、彼には聞こえていない。
抱きしめられたまま、身体の向きを変えられ、そのままベッドに押し倒され、彼が私を見下ろす。
「優子の一番恥ずかしい場所が良く見えるように、膝を立てて、脚を大きく開きなさい」
言われるがままに、脚を開く。
「まだだ。……そうだ、その両手で、優子自身の手で、そこを広げて見せなさい」
容赦のない声が飛ぶ。
「……っ!」
(すごく……すごく、恥ずかしい……!全然、慣れない……!)
「そういえば、優子のココは……随分と、毛が濃いんだな。中が良く見えないじゃないか」
「あ……」
(……言わないで……そんなこと……)
自らこじ開けた、濡れた秘芯に、彼の指が侵入してくる。
“クチュ、クチュ”と、生々しい水音が部屋に響く。
「一本、二本……三本はどうだ」
「うぅ、ん……っ、少し、痛い、かも……でも、気持ち、イイ……」
「そうか。じゃあ、そろそろ、本物を入れようか」
大きく硬くなった先端が、濡れた入り口に押し当てられる。
「痛いっ……!」
「……そうか。まだ半分処女みたいなもんだからな。……じゃあ、ゆっくり、広げていこう」
その優しい言葉とは裏腹に、残りのすべてが、一気に奥まで突き入れられた。
(ああ……!)
痛みで身体が強張る。
声も出ない。
なのに、不思議と、幸せだった。
(抱かれてる……肌と肌が、触れ合ってる……!)
ただそれだけで、痛みは甘美なものに変わっていった。
「……はぁ、はぁ……」
まだ、喘ぎ声もぎこちない。
「……優子は、まだ痛いみたいだな」
「う……うん……で、も……きもち、いい……よ……」
肉体的なオーガズムには程遠い。
けれど、私の心は、彼に愛されているという実感だけで、とっくに満たされていた。
「SEXが嫌いになってもらっても困るからな。……そろそろ、イかせてもらうよ」
腰の動きが激しくなる。
痛みが増すのと比例して、愛されているという感情も、どんどん膨れ上がっていく。
「出すぞ!いいな、出すからな……!」
その言葉と同時に、膣から彼の楔が引き抜かれた。
教わった通り、私は慌てて口を目一杯に広げて、待つ。
そこに、彼の熱い先端がねじ込まれた。
「うっ……うう……っ、気持ちいい……ふぅ……優子……」
(嬉しい……私の身体で、須藤さんが、気持ち良くなってくれた……)
「……全部出すまで、口に溜めておきなさい」
「んぐ……んん……ぐゎかった……」
彼の”本当の分身”が、口の中で、何度も何度も弾ける。
「口を開けて、中を見せなさい」
こぼさないように、口を半開きにして、彼に見せる。
彼が、その白い濁流を確認する。
「よし。じゃあ、飲み込みなさい。……ゆっくり、味わって飲み込みなさい」
一口ずつ、飲み込むたび、粘り気のあるそれが喉に絡みつく。
(この前よりも、苦くて……濃い味がする……)
「美味しかったかい?」
「うぅん……ちょっと、苦かった、かな……でも、おいしかった、です……」
「そうか。……それより、何か忘れていないか?この前も教えたはずだぞ」
「あっ……!」
(ダメだ、すっかり舞い上がって、忘れてた……!)
「優子の”いやらしい液”で汚れてしまったココを、しっかりときれいにしてもらわないとな」
「……はい!ごめんなさい……!」
私は、慌てて彼のまだ少し硬い”分身”を、もう一度口に含み、夢中で舐め清めた。
「……優子」
その最中、ふいに名前を呼ばれた。
顔を上げると、須藤さんは私を抱き起こし、深く、深く、口づけてきた。
まだ私の喉の奥に残っていた彼の味と、私の唾液が混じり合う。
(好き……もう、ほんとうに、好きすぎる……ぜったいに、離れない……)
しばらく、無言で抱き合ったまま、彼の鼓動を聞いていた。
やがて、彼が私の髪を撫でながら、静かに言った。
「……優子、好きか。私の事」
「……はい。でも、どうして……?」
「なら……うすうす、気づいているだろう?」
(……気づいてた。ずっと前から。ファミレスで会っていた頃から……)
(この人は、普通の人とは違う。私を、私じゃない何かに、変えてくれる人)
(だから、もう、覚悟はできてる……)
「…………はい」
少しだけ考えて、私は返事をした。
「じゃあ、いいかい。良く聞きなさい」
彼は、私を抱きしめたまま、いくつかの「約束事」を告げ始めた。
それは、私が彼の「所有物」になるための、儀式だった。
陰毛を、常に剃毛すること。
ノーブラ、ノーパンで生活すること。
生理であっても、奉仕を拒まないこと。
排泄や性行為を、すべて日記に記録し、管理されること。
「……優子は、私に会いたいかい?会いたいなら、できるね?」
(そんな、悲しいこと言わないで……会いたいに決まってる……)
「でも……まだ、経験してないことも、あるよ……」
(何でも言う事を聞くから……だから、お願い……私といる時だけは、私だけを見ていて……)
「そうだな。……少しずつ、一つ一つ、経験していけばいい。……いいね」
(こんなに、こんなに好きなのに……!)
「……うん。……分かった……」
その言葉を口にした途端、なぜか、理由もわからず、涙が溢れて止まらなくなった。
(お願い……他の女の子たちと、比べないで……)
その、あまりに切ない乙女心は、喉まで出かかったけれど、決して声には出せなかった。
須藤さんは、何も言わずに、ただ強く、私を抱きしめてくれた。
(……この気持ち、伝わって……)
私は、彼の胸の中で、静かに、すべてを受け入れる覚悟を決めた。
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